医療について


医療機関について
  入院/医療費について
最新医療情報
関連情報
  ヘルパーなどによる吸引の実現に向けて

(参考資料)
 ■「SMA疫学調査」結果報告




医療機関について


■入院
 長期入院と転院について
 全国共通の医療の値段を決めている診療報酬の改定によって、医療機関は長期にわたる入院患者の受け入れを敬遠しがちとなっています。それは入院期間が長くなると医療機関の収入が減額されるようなしくみが導入されているためです。そのため入院中の医療機関から他の医療機関への転院を要求されるケースが目立つようになりました。しかし人工呼吸器を使用している患者の場合など、受け入れ可能な医療機関や病棟、ベッド数には限りがあり、転院先を確保することは容易なことではありません。また転院によって主治医が替わることも患者とその家族にとって大きな不安要因です。
 転院するよう医療機関から求められるのは、患者がよい医療を受けるために環境が整った医療機関に転院させる場合と、医療機関の経営上の理由によって転院させる場合とがありますが、後者の場合には転院を強いることは認められません。つまり現在入院している医療機関から期限付きで転院を求められたとしても、それにしたがう義務は患者側にはないのです。しかし一方、医療機関や主治医との関係を悪化してまで入院を継続できないという心情も理解できますので、転院を受け入れるとしても、最低限きちんと納得し安心できる医療機関と主治医を紹介してもらうまでは、話し合いを継続することをつよくお勧めします。

 現在入院中の子ども病院や大学病院、公立病院などからの転院がどうしても避けられない場合に、一時的に他の医療機関への転院をしても、また数ヵ月後には転院先の医療機関から同じような要求をされる可能性が大いにあります。またはじめから期限付きで受け入れを認められるようなことも現実的にはあると思います。
 このような場合には、重症心身障害児施設や肢体不自由児施設などの医療型障害児施設や、国立病院機構(旧・国立療養所)重症心身障害児委託病床または進行性筋萎縮症児委託病床への入所入院もひとつの選択肢となります。これらは名前は施設となっていても、いずれも医療法に基づく医療機関です。手続きは児童相談所に申込みを行なって決定を受けた後に、それぞれの医療機関と契約を結ぶことになります。
 なお18歳以上の場合には、障害者自立支援法の介護給付の一つである療養介護(旧法・療護施設)が利用できます。詳しくは「福祉について」をご参照ください。

 在宅へ向けて
 ここでは「在宅」とは、医療機関における長期にわたる(また多くの場合、出生時より継続する)入院生活から退院し、自宅で必要なケアを受けながら、家族といっしょにふつうの生活を送ることと定義します。
 入院生活から在宅生活に移行するためには、同居の家族(とりわけ多くの場合は母親や配偶者)のみに大きな負荷をかけずに、在宅の継続を可能とするための環境整備が必要です。そのためには入院先の医療関係者の積極的な協力と責任ある関与のもと、地域のかかりつけ医、訪問看護ステーションの看護師や地域の保健師、ヘルパー事業者などとの連携や調整を綿密に行なう必要があります。「医療機関の都合による」、「まず在宅ありきのような」安易な在宅への移行は、SMA本人とその家族をも苦しめることになりかねません。とくにNICU(新生児集中治療室)などからの初めての在宅移行においては、試行を行ないながら慎重な手順を踏むことが肝要です。先輩の親たちに生活の様子や知恵を尋ねてみることもとても有用だと思います。
 実際には、人工呼吸器の使用や気管切開部の管理、あるいはたんの吸引などの医療的ケアが必要な場合には、引き受け手となるべきサービスが地域に存在しないなど、既存の訪問看護ステーションや福祉サービスでは使いづらいケースも多いと思います。子どもを対象としたサービスではその傾向がさらに顕著です。しかし地域によっては、看護師資格を持ったヘルパーを長時間派遣してくれる業者が存在したり、在宅前の医療機関が介助者のレスパイトのためにショートステイの便宜を図ってくれたりする例なども聞きます。自らネットワークを広げていって、みんなで在宅を支える体制を少しずつでも整えていくことが在宅生活の要諦といえるでしょう。

 感染症などによる緊急入院について
 SMAでは、肺炎や無気肺などに至るリスクに常に留意する必要があります。咳や吸引によって痰を排出することが困難な状況、かつ高熱が続く場合にはすぐに医師の診察を受け、呼吸音(聴診のポイント:上側の肺野だけでなく背側の呼吸音をよく確認する。呼吸音が聞こえない場合は、肺に空気が入ってないということです。また、痰の貯留を示した場合には水泡音やいびき音が聞こえます。)や胸部X線に異常があれば大事に至る前に入院し、抗生剤などによる治療を行なうと同時にできる限り排痰にも努めます。必要に応じて排痰体位(痰が溜まっている部分を上にする)をとりカフマシンやアンビューパックを使用し、スクウィージング法などの理学療法も取り入れることも有効な排痰法の一つです。以前は痰が溜まった部分をたたくとよいということも言われていましたが、現在では全く意味の無い排痰方法です。
 熱や咳の影響による呼吸筋の疲労などから、咳を出す力はますます弱くなって、自力での排痰は困難になります。肺に痰が溜まると、肺の細部まで空気が行き渡らずに浅い呼吸となり、また肺の中では痰を栄養として病原菌が増殖します。その結果、単なる上気道感染から肺炎、そして無気肺へと急激に悪化の恐れがあります。呼吸機能の低下は生命の予後に直結しますので、この点だけは神経質になりましょう。
 地域のかかりつけ医と、神経内科の専門医の双方とよい関係を持っておくことが大切です。なお神経内科の専門医以外の診察を受ける際には、肺炎のリスクが高いことをはっきりと伝えたほうがよいと思います。

 普段から呼吸機能については聴診器を使い肺の音にも留意してください。そして定期的な呼吸機能検査や呼吸リハを行なっておくことをお勧めします。SMAの場合は、呼吸器だけでなく関節の拘縮や側彎の防止なども含めて、身体を良好な状態に保つことによってQOLの高い生活を送ることが充分に可能です。

 差額ベッド室(特別療養環境室)について
 差額ベッド料は患者の希望によるオプションとされているために、医療保険の給付の対象とはならずに全額自己負担となります。公費負担医療の給付の対象にももちろんなりません。
 しかし治療上の必要(救急患者や術後患者、集中治療の実施、感染症に罹患するおそれなど)があるときや、入院時に患者が説明を受けて室料の記載のある書面による同意をしていないとき、あるいは病棟管理の必要性等から、差額ベッド室に入院させた場合には、医療機関は患者にこの差額ベッド料を請求することはできません。すでに払ってしまっていても返還を求めることもできます。
 差額ベッド料を支払っている患者の実に8割は、本来は負担する必要のない人たちだという話もあります。厚生労働省も、患者の意に反して差額ベッド室に入院させられることのないようにしなければならない旨の通知を出していますので、もし差額ベッド料に関して疑義がある場合には、遠慮をせずに医療機関の医事課などへご相談してみてください。


■医療費について
 公費負担医療制度について
 障害や難病のある人、乳幼児などに対しては、医療保険の通常3割の自己負担部分に対して公的な助成を受けられる制度がいくつか存在しています。詳しくは福祉について/公費負担医療制度についての項目をご参照ください。

 高額療養費制度について
 医療保険を使用した医療費で一暦月あたり一定の金額を超えた場合には、その超えた部分が申請により払い戻される制度です。詳しくは医療保険制度について/高額療養費の項目をご参照ください。

 07年4月から70歳未満の方についても、入院時の高額療養費が現物給付化されました。ただし入院治療で自己負担限度額内での支払いですむための適用を受けるには、自分が加入している医療保険の保険者(企業の健保組合や市町村の国民健康保険窓口、社会保険事務所の保険給付課など)において、医療保険の限度額適用認定証を発行してもらい、受診の際に医療機関に提出することが必要です。
 SMAで入院するケースでは手術などの計画的な入院ではなくて、肺炎などで突発的に緊急入院することが多いと思いますので、あらかじめこの認定証を手元に用意しておくのがよいと思います。限度額適用認定証の有効期間は最長で1年で、有効期間中は何度でも使えます。
 高額療養費の上限負担額は所得に応じて3つの階層に分かれています。そこで、認定証の提出によって医療機関窓口では、自らの所得階層の上限負担額を超える負担が不要となります。いままでは医療機関窓口において、原則いったん全額を立て替え、数ヶ月後に高額療養費の還付を受ける形となっていました。
 所得階層が「一般」に該当する例で説明しますと、いまは認定証を手元に用意しておけば、医療機関窓口で支払わなくてはならない金額は、医療保険がきく部分としては大きな外科手術でもしない限りは、一医療機関あたり最高でも月額約8万円強ですみます。ちなみに保険点数で26,700点(保険点数1点=10円)を超える場合は高額療養費の対象となります。おおむね10日間くらいの入院をするとこの金額を超えるくらいと思えばひとつの目安となると思います。
 ただし高額療養費制度には、過去12ヶ月で4回目以降の上限負担額がさらに低くなる多数該当や、世帯合算のしくみもありますので、ケースによっては従来のように償還払いを併用しなくてはならないことも考えられますのでご注意ください。

 在宅療養指導管理料について
 在宅療養で主治医が必要と認める機器(人工呼吸器や酸素濃縮装置など)や物品(気管カニューレ、チューブ、脱脂綿など)は、医療機関が在宅療養指導管理料を算定することによって、必要な分だけ支給または貸与が行われることになっています。詳しくは医療保険制度について/在宅療養指導管理料の項目をご参照ください。




最新医療情報


 「SMA研究の現状−我々は今どこにいるのか(1998)」

   海外情報 SMA研究ニュース  (SMA研究についての海外からの最新情報をお届けする、当会会員シニアさんが個人で作成しているページです




関連情報


 へルパーなどによる吸引の実現に向けて

 医師法17条の規定により、痰の吸引などの行為は、「医行為」として医師または看護師等の医療職が行なうことが原則とされ、例外として本人の家族がそれを行なうことが認められています。
 SMAT型や、U型の一部のように人工呼吸器を使用していたり、気管切開をしている場合には、状態によっては高い頻度の痰の吸引が必要となることがあり、これは在宅生活において介護者たる家族の大きな負担となっています。痰の吸引は時間や場所を選ばず必要となるため、介護者は昼間の近所への買い物の外出や、夜間の睡眠さえ満足にとることができないケースも枚挙にいとまがありません。またこのような現状は、SMAの本人たちの自立や社会参加の促進に対する制約要因となっていることも考慮する必要があります。

 SMA家族の会では、02年、日本ALS協会の呼びかけに応える形で18万人の署名活動に協力したことを契機に、日本ALS協会やバクバクの会などとの連帯行動にも積極的に参加し、「ヘルパー等介護者による痰の吸引」が認められるように要望をしてまいりました。しかしその後、厚生労働省医政局設置の「看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会」報告書を踏まえて03年7月に出された医政局長通知では、「ALS患者に限って一定の条件のもと、ヘルパー等が吸引を行なうことが容認した」形に留まり、SMAをはじめとするALS以外の者のおかれた状況は以前となんら変わりがありませんでした。

 そこでSMA家族の会では、バクバクの会とともに、04年1月から担当部局である厚生労働省医政局への働きかけを行ない、一日も早くALS以外の吸引を必要とする患者にもヘルパー等が吸引を行なうことができるような環境の整備について、数度の話し合いの場をもってまいりました。この席においては、当事者やその家族からの状況をきちんと説明・報告し、現実的な解決方法を行政側と一緒に模索する継続的な話しあいによって、新たな時代にふさわしい協力関係の構築を念頭にしながら懸案の早期解決を目指してきました。

 そして厚生労働省医政局に04年5月に設置された「在宅及び養護学校における日常的な医療の医学的・法律的整理に関する研究会」(以下「研究会」といいます。)では、@盲・聾・養護学校における医療のニーズの高い児童生徒等に対するたんの吸引、経管栄養及び導尿、AALS以外の在宅患者に対するたんの吸引行為についての検討を行い、下記の通り報告書としてまとめられました。


 ■吸引問題をはじめとする医療的ケア問題の解決についての提案書(04年6月)


 □盲・聾・養護学校におけるたんの吸引等の医学的・法律学的整理に関する取りまとめ(04年9月)

 研究会は、前半の検討課題である養護学校において教員によって行うことが許容される医療的ケア(吸引等3行為)の標準的な手順と範囲及びそのために必要な条件に関する報告書を取りまとめ、9月17日に発表しました。この報告を受け、厚生労働省医政局長通知が10月20日に発出され、また文部科学省初等中等教育局長通知も22日に発出されました。なお、養護学校に関する事務は、一般的には都道府県自治事務に該当するため、今回の通知に基づいて、実際に看護師の配置を行い教員による医療的ケアを行うかどうかは、最終的には都道府県の判断に任されることとなります。

 □在宅におけるALS以外の療養患者・障害者に対するたんの吸引の取扱いに関する取りまとめ(05年3月)

 研究会は、後半の検討課題である「在宅におけるALS以外の療養患者・障害者に対するたんの吸引の取り扱い」に関する報告書を取りまとめ、3月10日に発表しました。そしてこの報告を受け、厚生労働省医政局長通知が3月24日に発出されています。これによって「在宅」における「たんの吸引」が一定の条件のもと、医療職と家族以外のヘルパーやボランティアにも容認されるとの行政解釈が示されました。
 SMA家族の会では、この問題に対して一年以上にわたり真摯に取り組んでまいりましたが、「吸引問題」については、早い時期に一定の成果が出たものと前向きに評価をしたいと思います。
 しかし医療的ケアをめぐる問題は、@在宅における「たんの吸引」以外(経管栄養など)の医療的ケアの問題、A施設や外出先など「在宅」以外の場所における医療的ケアの問題、Bいわゆる「普通学校」における医療的ケアの問題など、まだ残されている問題も多く、「医行為」という概念の根本的な見直しが必要な時期にさしかかっているとも言えるのではないでしょうか。













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