医療保険制度について
わが国では国民皆保険体制のもと、短期滞在の外国人を除くすべての者が何らかの医療保険に加入することになっています。
現在の制度には、組合管掌健康保険、政府管掌健康保険、各種共済組合、船員保険、国民健康保険(市町村国保と国保組合)等の多種が存在し、各制度によって保険給付の内容に違いが存在しています。
しかし医療保険制度については複雑多岐にわたることもあり、またこれらを専門としたサイト等もありますので、ここでは以下のいくつかのトピックにしぼった解説に留めたいと思います。
詳細は、組合管掌健康保険については当該健康保険組合、政府管掌健康保険及び船員保険は社会保険事務所、各種共済組合は当該共済組合、国民健康保険(市町村国保と国保組合)は、市町村国保は当該市町村に、国保組合は当該国保組合にお問合せください。
●高額療養費
この制度は医療保険を使用した医療費で一暦月あたり一定の金額を超えた場合には、その超えた部分が申請により払い戻される制度です。(70歳以上の方には条件の緩和・優遇措置がありますが、ここでは省略します)
70歳未満の被保険者(本人)または被扶養者(扶養家族)の一人一暦月(月の1日〜月末まで)同一の医療機関あたりの自己負担限度額は次のとおりです。
ただしこれらは、過去12ヶ月において高額療養費の該当回数が4回(4ヶ月)以上となるときには、4回目からの一人一暦月あたりの自己負担限度額がさらに引き下げられ、次の金額となります。
一般 80,100円+(当該医療費−267,000円)×1% 低所得者 35,400円 健保:生活保護の被保険者や市町村民税非課税世帯の者
国保:同一世帯の世帯主とすべての被保険者が市町村民税非課税の者上位所得者 150,000円+(当該医療費−500,000円)×1% 健保:標準報酬月額53万円以上の被保険者及びその扶養者
国保:同一世帯のすべての被保険者の基礎控除後の所得の合計額が670万円を超える者
なお、同一世帯で一暦月の自己負担額が1レセプト(保険医療機関の保険請求計算書)単位で21,000円以上となるものが2名以上いる場合には、それらを世帯単位で合算し上記1または2に当てはめた世帯合算が行われます。また、同一人が一暦月に一以上の医療機関にかかり、それぞれの自己負担額が1レセプト単位で21,000円以上となるときも同様です。
一般 44,400円 低所得者 24,600円 上位所得者 83,400円
レセプトは、同じ医療機関でも医科と歯科、入院分と通院分は別となり、また医療機関によっては診療科ごとに異なることもあります。また、院外処方箋による保険薬局分のレセプトは、医科分のレセプトと合算できます。いずれにしましても非常にわかりにくいので自己負担する医療費が高額になるときには、必ず自分の加入する保険制度の保険者に確認することをお奨めします。
07年4月から70歳未満の方についても入院時の高額療養費が現物給付化されました。ただし入院治療で自己負担限度額内での支払いですむための適用を受けるには、自分が加入している医療保険の保険者(企業の健保組合や市町村の国民健康保険窓口、社会保険事務所の保険給付課など)において、医療保険の限度額適用認定証を発行してもらい、受診の際に医療機関に提出することが必要です。
高額な医療費の支払に無利子で貸付が受けられる高額医療費貸付制度もあります。
●在宅療養指導管理料
保険医療ではさまざまな診療行為を点数で評価しており、これを診療報酬といいますが、この在宅医療という分類には在宅患者診療・指導料(往診料や在宅患者訪問看護料など)のほかに、在宅療養指導管理料というものが定められています。
この在宅療養指導管理料は、さらに在宅酸素療法指導管理料(酸素ボンベ加算、酸素濃縮装置加算、携帯用酸素ボンベ加算、設置型液化酸素装置加算、携帯型液化酸素装置加算を含む)や在宅人工呼吸指導管理料(陽圧式人工呼吸器加算、鼻・顔マスク人工呼吸器加算、陰圧式人口呼吸器加算を含む)、在宅気管切開患者指導管理料(人工鼻加算を含む)などに細分化されており、在宅療養で主治医が必要と認める機器(人工呼吸器や酸素濃縮装置など)や物品(気管カニューレ、チューブ、脱脂綿など)はこれらの指導管理料にて、必要な分だけ支給または貸与が行われることになっています。
しかし実際には、在宅への移行に際して病院からこうした機器や物品の自費購入を求められるケースも多いとよく聞きます。その場合はきちんと病院側と話し合いをすることによって、医療保険の給付として行われるようになった例もあります。
●訪問看護療養費(家族訪問看護療養費)
主治医の指示のもとで療養上の世話や必要な診療の補助を受けるために指定訪問看護ステーションを利用した場合、医療保険の訪問看護療養費(家族訪問看護療養費)制度を利用することができます。(病院・診療所が行う訪問看護は、診療報酬の在宅患者訪問看護・指導料として算定します) 訪問看護療養費の基本利用料は上述の高額療養費の対象となりますが、訪問診療に要する交通費等は実費負担となります。
医療保険のしくみとは離れますが、在宅人工呼吸器使用特定疾患患者に対して、診療報酬で定められた回数を超える訪問看護を実施することのできる制度(原則として1日につき3回目以降の訪問看護について患者1人当たり年間260回を限度)として、在宅人工呼吸器使用特定疾患患者訪問看護治療研究事業というものがあります(ただし青森県、福島県、三重県、大阪府、大分県、鹿児島県、沖縄県では未実施)が、この制度の利用は特定疾患治療研究事業の対象疾患に限られており、SMAではこの制度の利用はできません。こうしたところにもSMAが特定疾患治療研究事業の指定を受けるべき大きな理由があるように思われます。
執筆■福島 慎吾
お問合せ先:事務局
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