教育について

 SMAの子どもたちには一般的に知的障害が伴いません。私たちが子どもたちの教育、とくに学校教育に対してことさら大きな情熱(期待や不満)を感じるのも、このようなSMAの特性に起因していることは否めません。一般論として、SMAのように肢体不自由の程度が重度でありながら、重複障害のない子どもたちは実際には少数派であり、SMAの子どもたちにとって、学力はもちろんのこと友だちとの人間関係の形成など、将来を見据えたどのような教育環境が望ましいのかを私たちは考えながら、この教育の問題に取り組みたいと思います。


  Index  ●学校教育法による就学先について
        ●子どもの権利条約から見た障害児の就学についての一考察
        ●特別支援学校の現状について
        ●小・中学校の現状について
        ●学校施設のバリアフリー化について
         【学校バリアフリー化の実例紹介】@千葉県船橋市立芝山東小学校 
                               A埼玉県入間市立仏子小学校
                               B神奈川県藤沢市立六会小学校

        ●特別支援教育について
      





学校教育法による就学先について

 義務教育に関しては、学校教育法第22条および第39条により、保護者が子女を小・中学校または特別支援学校(旧「盲・聾・養護学校」)の小・中学部に就学させる義務が定められています。
 SMAの子どもたちの就学先を小・中学校とするのか、あるいは特別支援学校の小・中学部とするのかは、就学先の選択権の問題や受入れ体制、友だちをはじめとする人間関係の形成、子どもたちの将来の進路なども複雑に絡んだたいへん悩ましい問題です。ここでは、現行の就学指導や就学措置を巡る制度のしくみを中心として、その現状なども踏まえた情報を提供したいと思います。

 就学指導・就学措置のしくみ

 障害のある子どもたちの就学については、学校教育法に基づく政令である学校教育法施行令において詳細に定められています。
 現在我が国においては、分離教育を前提とした就学指導・就学措置がまだ残されており、学校教育法施行令第22条の3に定められた障害の程度に該当する障害児は認定就学者を除き、特別支援学校への就学を勧められることになります。なお、認定就学者とは、市町村の教育委員会が、その者の障害の状態に照らして、当該市町村の設置する小学校または中学校において適切な教育を受けることができる特別の事情(学校の施設や設備の整備、専門性の高い教員の配置などの環境面が整っていることなど)があると認められる者のことを指します。

学校教育法施行令第22条の3(抄)  政令で定める肢体不自由者または病弱者の障害の程度は、次の表に掲げるとおりとする。

○肢体不自由者
1 肢体不自由の状態が補装具の使用によっても歩行、筆記等日常生活における基本的な動作が不可能または困難な程度のもの
2 肢体不自由の状態が前号に掲げる程度に達しないもののうち、常時の医学的観察指導を必要とする程度のもの

○病弱者
1 慢性の呼吸器疾患、腎臓疾患および神経疾患、悪性新生物その他の疾患の状態が継続して医療または生活規制を必要とする程度のもの
2 身体虚弱の状態が継続して生活規制を必要とする程度のもの

 つまり、第22条の3に該当する障害児は、一義的には特別支援学校に就学指導が行われるしくみとなっています。しかし、07年4月改定で学校教育法施行令第22条の3から「養護学校に就学させるべき」という強制的とも取れる表現が削除され、また、第18条の2において就学先の決定に際しての保護者への意見聴取が規定されました第22条の3に該当するか否かは、正式には10月1日〜11月30日の間に実施される学校保健法第4条に定められた就学時の健康診断の際に判断され、12月31日までに就学指導委員会の調査・審議によって就学先の判定が行われるしくみです。
 しかし就学指導委員会は就学措置の決定機関ではないため、多くの市町村の教育委員会では、ノーマライゼーションやインクルージョンの理念のもと、保護者の意見を尊重した形での就学措置を行っており、実際にはSMA2型や3型の子どもたちの多くは、小・中学校の通常の学級に就学しています。(しかも認定就学者として就学しているケースは一部の地域を除きほとんど見られません。)

 一方、SMA1型のように人工呼吸器を使用し、吸引などの医療的ケアが必要な場合には、この就学のハードルは一気に高くなるのが実情です。一部の地域では学校に看護師を配置し、通常の学級において医療的ケアを実施しているケースも見られますが、特別支援学校ですら保護者の付き添いなしに通学するのが難しい現実も見られ、その場合には自宅等への訪問教育を選択せざるを得ないことも考えられます。しかし「在宅および養護学校における日常的な医療の医学的・法律学的整理に関する研究会」報告書に基づく通知により、特別支援学校における教員による吸引などの医療的ケアが一定の範囲と条件のもと認められるなど、医療的ケアの必要な子どもたちを取り巻く状況も少しずつではありますが変化しつつあります。

 なお、小・中学校への就学に関する事務は、市町村の自治事務に位置付けられています。つまり市町村が「自らの責任と判断による事務」を行うことのできるしくみが法的にすでに整っていることを、ここでは特筆しておきたいと思います。ちなみに特別支援学校への就学に関する事務は、都道府県の自治事務となっています。いずれも就学措置に関して不服のある場合には、行政不服審査法による異議申立て、あるいは行政事件訴訟法による抗告訴訟(処分の取消および義務付けの訴え)が可能です。




 図表1 就学指導・就学措置に関する流れ (出典:埼玉県就学指導実施要項 平成15年9月1日改訂版)
 ※ 「盲・聾・養護学校」は「特別支援学校」と読み替えてください。


就学に関する主なスケジュール

10月1日 学齢簿の作成基準日(市町村教育委員会)
10月1日から11月30日 就学時の健康診断の実施(市町村教育委員会)
12月31日まで 就学指導委員会の調査・審議(市町村教育委員会)
12月31日まで 障害児の氏名等を都道府県教育委員会へ通知(市町村教育委員会)
1月31日まで 保護者への入学期日の通知(市町村教育委員会、都道府県教育委員会とも)




子どもの権利条約から見た障害児の就学についての一考察

 法規範は、憲法>条約>法律>命令>条例・規則のような順序で段階構造をなしており、下位の法は上位の法によって具体化され、権限を授けられています。したがって上位の法に抵触する下位の法の効力は否定されることになります。
 これを就学先の選択権という視点から、子どもの権利条約、学校教育法、学校保健法、学校教育法施行令、そして本来は法規範には該当しませんが291号通知の内容をもとにして考察をしてみたいと思います。

 子どもの権利条約(政府訳では「児童の権利に関する条約」)は、その名前のとおり子どもの権利を定めた国際条約であり、我が国は1994年に批准を行っています。キーワードは「子どもの最善の利益」であり、障害を理由とした差別の禁止(第2条)や障害のある子どもの権利(第23条)がはっきりと定められています。
第23条(障害のある子どもの権利)
1 締約国は、精神的または身体的な障害を有する児童が、その尊厳を確保し、自立を促進しおよび社会への積極的な参加を容易にする条件の下で十分かつ相応な生活を享受すべきであることを認める。
2 締約国は、障害を有する児童が特別の養護についての権利を有することを認めるものとし、利用可能な手段の下で、申込みに応じた、かつ、当該児童の状況および父母または当該児童を養護している他の者の事情に適した援助を、これを受ける資格を有する児童およびこのような児童の養護について責任を有する者に与えることを奨励し、かつ、確保する
3 障害を有する児童の特別な必要を認めて、2の規定に従って与えられる援助は、父母または当該児童を養護している他の者の資力を考慮して可能な限り無償で与えられるものとし、かつ、障害を有する児童が可能な限り社会への統合および個人の発達(文化的および精神的な発達を含む。)を達成することに資する方法で当該児童が教育、訓練、保健サービス、リハビリテーション・サービス、雇用のための準備およびレクリエーションの機会を実質的に利用しおよび享受することができるように行われるものとする
(以下略)

 上述のとおり、子どもの権利条約では、障害のある子どもおよびその利益を代表する保護者の「申込みに応じた」、かつ「子どもの状況および保護者の事情に適した援助」が、教育の分野においても「社会への統合および個人の発達を達成することに資する方法」によって確保されるべきだと定められており、特別支援学校における教育を受けることは、障害児とその保護者の「権利」であると理解することができると思います。
 次に、学校教育全般を定める法律である学校教育法に目を移してみると、ここには義務教育に関して保護者が子女を小・中学校または特別支援学校へ就学させる義務や特別支援学校の設置目的などが定められてはいるものの、障害児が特別支援学校へ就学しなくてはならないとする条文を見つけることはできません。また、学校における保健管理および安全管理を定める学校保健法には、市町村教育委員会による就学時健康診断とその結果に基づく特別支援学校への就学に関し指導を行う等適切な措置の実施が定められており、これが就学指導の行われる法的根拠の一つと言えますが、これも障害児が特別支援学校へ就学しなくてはならないとする規定とまでは読み取ることはできません。
 しかし、実際の就学指導や就学措置などの事務の多くが行われるその根拠となっている学校教育法施行令では、第22条の3の「養護学校に就学させるべき心身の故障の程度」の文言こそ削除されましたが、まだ分離教育を原則とするいくつかの規定が残されています。学校教育法施行令は、学校教育法からの委任を受けて、義務に関し必要な事項および障害の程度を定めているものであって、最近になって文部科学省も特別支援教育への転換は、国際的な潮流でもあるインクルージョン教育(統合教育)へ向かうものと明言していることからも、学校教育法施行令に残された分離教育を前提としたシステムは、遠くない将来には改定される流れにあるといえます。


■まとめ
子どもの権利条約(条約)
 ○障害による差別の禁止
 ○子どもの最善の利益を第一に考慮
 ○申込みに応じた特別の養護についての権利
 ○可能な限り社会への統合と個人の発達に資する援助の提供

学校教育法(法律)
 ○保護者が子女を、小・中学校または特別支援学校の小・中学部へ就学させる義務
 ○特別支援学校の設置目的
 ○義務に関し必要な事項および障害の程度の政令への委任

学校保健法(法律)
 ○市町村の就学時健康診断とその結果に基づく特別支援学校への就学に関する指導等適切な措置の実施義務

学校教育法施行令(命令/政令)
 ○市町村の障害児(認定就学者を除く)以外への入学通知義務(分離教育の根拠となる規定)
 ○都道府県の障害児に関する特別支援学校への入学通知義務
 ○障害の程度を規定(従来の「就学させるべき」の文言は削除!)
 ○就学先の決定に際して、保護者への意見聴取を規定(新しく規定!)

291号通知(通知/技術的助言)
 ○障害児は、認定就学者を除き、養護学校において教育すること

 つまり障害のある子どもの特別支援学校への就学が権利から義務へと変貌している点。そして障害のある子どもまたはその利益を代表している保護者による就学先の選択決定が行政機関である教育委員会による就学先の選択決定へ変貌している点。この2つの重要なロジックの変貌こそが現在の就学指導・就学措置の抱える問題点の根源といわざるを得ません。

 専門性を有し障害のある子どもたちへのきめ細かい対応のできるような特別支援学校に、本人と保護者の希望によって就学する権利を保障するというのが、特別支援教育の本来の在るべき姿ではないでしょうか。もちろんこれが、通常の学級に就学することを希望する障害のある子どもたちや保護者の権利を妨げることや、通常の学級に在籍する障害のある子どもたちに対する支援の欠如の言い訳になってはならないことは、子どもの権利条約の規定からも明白なことです。

 子どもの権利条約第43条の定めにより国連に設置されている子どもの権利委員会から、障害のある子どもの教育関連分野に関して、我が国は以下の懸念と勧告を受けていることを、最後に添えておきます。(子どもの権利委員会の最終見解 CRC/C/15/Add.231 04年2月26日)

 また、06年12月に国連で採択された障害のある人の権利条約(障害者の権利条約)においては、以下のような完全にインクルーシブな教育制度が求められるにいたっています。(第24条)
 わが国も必要な国内法の整備を行った後に、この障害のある人の権利条約(障害者の権利条約)への批准を表明しています。




特別支援学校の現状について

 特別支援学校の現状を統計的なデータを中心としてご紹介をしたいと思います。

 上記のデータから、特別支援学校はその数が限られているため一般的には自宅から遠く離れた地域に就学することになり、近所に友だちがいないなど住んでいる地域との関係が希薄となりかねないという点が挙げられると思われます。(ちなみに小学校は全国に22,878校、中学校は10,992校 06年5月1日現在) また、旧肢体不自由養護学校の6割以上の児童・生徒は知的障害のある子どもたちという実情は、在籍する学年相応の学力の習得を始め、子どもたち同士の人間関係の形成など、SMAの子どもたちにとっては相当に制約を受けた環境となることを認めざるを得ません。旧病弱養護学校は全国に91校と数はさらに限られ、そのほとんどが病院などの医療機関に隣接または併設されており、在籍する児童・生徒の大半は入院治療中の者となっています。
 一方、特別支援学校では教員の配置数も多く、障害のある子どもたちの教育に熱心な優秀な教員も多く存在しています。設備面も小・中学校と比べれば整っているなど、より多くの予算に裏付けられた支援が行われている点は評価できるポイントだと考えます。ただし前述のとおり、吸引などの医療的ケアへの学校としての対応については、たとえ特別支援学校とはいえこれからの課題としている都道府県も多く、きちんとした確認が必要な点を申し添えておきます。また、医療機関に長期にわたり入院している子どもたちにも教育を受ける権利があります。入院中であっても主治医の許可があれば、医療機関に隣接する特別支援学校や院内に設置されている分教室(院内学級)への通学、病室のベッドサイドへの訪問教育などの形で特別支援教育を受けることが可能です。
 実際に、特別支援学校に通う児童・生徒1人あたりには、小・中学校に通う児童・生徒1人あたりに要する経費の10倍以上の予算が使われています。保護者や児童・生徒に対しても特別支援学校への就学奨励に関する法律に基づいて、都道府県から教科用図書の購入費、学校給食費、通学または帰省に要する交通費および付添人の付添に要する交通費、学校附設の寄宿舎居住に伴う経費、修学旅行費、学用品の購入費などの全部または一部を支弁することが定められています。

 私たちは一般的に、特別支援学校とそこにおける障害児教育についてあまりにも知識を持ち合わせていないのではないでしょうか。しかしこれこそが分離教育のもたらした弊害の一つだと考えます。就学問題を考えるに当たっては、仮に小・中学校の通常学級への就学を希望しているとしても、特別支援学校の見学などもきちんと行って、SMAの子どもにとってどのような教育がふさわしいのか、改めて考えてみるのもよい機会だと思います。就学・進学できる学校で就学・進学先を決定するのではなく、卒後の進路を視野に入れつつ就学・進学先を決めることが肝要です。




小・中学校の現状について

 全国の通常の学級には、実際には認定就学者ではない障害児(肢体不自由児や知的障害児)が多数在籍しています。学校教育法施行令第5条1項2号にて新たに制定された認定就学制度については、全国で毎年300名程度が認定就学しているに過ぎず、ほとんどその役割を果たしていない状況です。ちなみに埼玉県では認定就学制度による認定就学者はゼロ(04年4月現在)であるのに対して、市町村就学指導委員会で「特別支援学校適」、「特別支援学級適」と判定されたものの、保護者の希望により通常の学級に就学している障害児の数は、小学校に930人、中学校に181人であるとの報告(03年5月1日現在)があります。
 文部科学省は最近になってようやくインクルージョン教育をめざしていくと、従来の方針変更を明言しはじめたところであり、これらの通常の学級に在籍する障害のある子どもたちも、特別支援教育による必要な支援を受けることのできる対象者と認めたばかりのところなのです。

 前述のとおりSMA2型、3型の子どもたちの多くは、小・中学校の通常の学級に在籍しています。しかし一般論として、SMAくらい肢体不自由の程度が重度な場合、介助員の存在なしに小・中学校において自立(自律)した学校生活を送ることは多くの場合困難がともない、ここから介助員制度の有無が大きな問題としてクローズアップされてくることになります。
 07年度から特別支援教育支援員(学校介助員/支援員)に関する地方交付税による地方財政措置も行われるようになりましたが、しかし制度の不備によってお住まいの市町村に学校介助員/支援員制度がない場合、多くは保護者の付き添いを求められることになります。本来であれば福祉サービスにおいて、必要な支援が用意されてしかるべきものと考えますが、学校生活関連で、国の福祉サービスの算定基準からは大きく欠落している部分が、以下の3点存在しています。

 つまり学校内や通学時、学校行事の際の介助など、SMAの子どもたちの自立した学校生活と密接にかかわる局面においては、福祉サービスを利用することは原則できないのです。(ただし福祉サービスのほとんどは市町村の自治事務であり、市町村が横出しのサービスとして学校における福祉サービスのメニューを整えることが制度上不可能ではないことをここに記しておきたいと思います。実際に、愛知県名古屋市においては福祉サービスの枠内で通学介助が行われています。) よって、現に介助員制度がない自治体のお住まいの場合は、就学時に間に合うように、就学予定の数年前から介助員制度の整備を市町村に対して働きかける必要が生じることになります。
 また、通常の学級へ就学をしたあとも、遠足、社会科見学、林間学校、修学旅行やプール、運動会などへの「参加」を巡ってさまざまな話し合いや説得が必要となると思います。しかしこれらは、会の定例会などを利用していろいろな実例を聞きながら、よりよい解決方法を見つけることができると思います。
 教育委員会も学校現場も、非常に安直に保護者の付き添いや同行を要求しますが、その際には、どうしてSMAの子どもを小・中学校の通常の学級に就学させたいのか、あるいはさせたのかをもう一度きちんと確認のうえしっかりと相手に伝えることも必要です。

 このほか小・中学校では、特別支援学級(旧特殊学級 地域によっては、心身障害学級や養護学級と呼ばれていることもあります。)および通級による指導という制度による特別支援教育も行われています。
 これらは291号通知によって、特殊学級は「補装具によっても歩行や筆記等日常生活における基本的な動作に軽度の困難がある程度のもの」および「慢性の呼吸器疾患その他疾患の状態が持続的または間欠的に医療または生活の管理を必要とする程度のもの、身体虚弱の状態が持続的に生活の管理を必要とする程度のもの」、通級による指導は「肢体不自由、病弱または身体虚弱の程度が、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする程度のもの」とそれぞれされており、SMAの子どもたちがこれらの学級に就学している例は少ないものと思われます。しかし大阪府など関西の一部の地域では、通常の学級にて教育を受けながらも必要な支援を受けるために、便宜上、特別支援学級に在籍しているような例もみられます。





学校施設のバリアフリー化について

 02年12月に閣議決定された障害者基本計画に、新たに学校施設のバリアフリー化が盛り込まれたことを受けて、03年8月に文部科学省は、学校施設のバリアフリー化等に関する調査研究者会議を設置し審議を行い、04年3月に報告書「学校施設のバリアフリー化等の推進について」を取りまとめました。そして04年3月に文部科学省大臣官房文教施設部より「学校施設バリアフリー化推進指針」が出され、学校施設のバリアフリー化等の推進に関する基本的な考え方および計画・設計上の留意点を示しながら、学校施設のバリアフリー化を着実かつ迅速に進めるように学校の設置者に対して要請しています。

 法整備に目を移しますと、ハートビル法(高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律)が94年6月に成立したものの、学校は特別支援学校も含めてバリアフリー化の対象建築物とはされず、また学校以外の対象建築物であってもそれらはすべて努力義務の対象に留まっている状況でした。
 しかし03年4月に施行された改正ハートビル法では、特別支援学校(ただし床面積2,000u以上)は特別特定建築物として新たに適合義務の対象になり、また小・中学校も新たに特定建築物として努力義務の対象に含まれました。
 06年にはハートビル法と交通バリアフリー法を統合した形でバリアフリー新法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)が成立し、点のバリアフリーから線や面のバリアフリーへと、バリアフリー施策は新たな局面に入ることとなります。
 余談ですが、国土交通省では1日の乗降客が5,000人以上の鉄道駅は、2010年までに100%バリアフリー化する方針を示しているなど、社会資本のバリアフリー化、ユニバーサルデザイン化は、今後も着実に進んでくるものと思われます。

      【学校バリアフリー化の実例紹介】 @千葉県船橋市立芝山東小学校 
                              A埼玉県入間市立仏子小学校
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特別支援教育について

 01年1月の「21世紀の特殊教育の在り方について(最終報告)」、そして03年3月の「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」を受けて、05年12月に中央教育審議会から「特別支援教育を推進するための制度の在り方について(答申)」が出されました。
 この報告書によると「特別支援教育」とは、「障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善または克服するため、適切な指導および必要な支援を行うもの。また現在、小・中学校において通常の学級に在籍するLD・ADHD・高機能自閉症等の児童生徒に対する指導および支援が喫緊の課題となっており、特別支援教育においては、特殊教育の対象となっている幼児児童生徒に加え、これらの児童生徒に対しても適切な指導および必要な支援を行うもの」とされています。
 そしてまた、「今後、特別支援教育の理念と基本的考え方の一層の普及・定着を図るため、学校教育法等における特殊教育の用語を改めることを含め、関係法令への位置付けを検討することが必要」としており、具体的には以下の3点の制度見直しが行われました。



 図表2 特別支援教育の対象の概念図(出典:文部科学省ホームページ)


これらの答申を受け06年通常国会において学校教育法等の一部を改正する法律が成立し、07年4月から特別支援教育がスタートしています。なお特別支援教育の運用に関して、国会の審議を通して確認された重要なポイントは以下のとおりです。
  1. 特別支援教育は、認定就学者ではない通常の学級で学ぶ身体または知的に障害のある児童生徒に対しても適用されること。
  2. 国際的なインクルーシブという流れを十分に踏まえながら今後の対応を考えていくこと。
  3. 学校教育法施行令22条3の「養護学校に就学させるべき」という強制的な意味合いを含む文言を削除。
  4. 就学先の決定に際しては、保護者の意見を聞かなければならないことを学校教育法施行令に規定。
 また教育行政は、地方自治体の自治事務となっているため、私たちは地域の教育行政の動きに目を光らせておく必要があります。現に宮城県は05年7月に、「宮城県障害児教育将来構想」を取りまとめ、インクルージョン教育の原則を目指す方針を、国よりいち早く打ち出しています。





お問合せ先:事務局   

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