【実例紹介】

ここからは実例を挙げて解説します。この1例は、筋生検にてSMAU型と診断がついていますが、屋内では歩行可能な女性です。また当院にて1ヵ月に23回(隔週)でリハビリを行っています。呼吸リハビリは、平成1410月(当時16歳)に%VC50%を下回ったことに加え、咳をしたときの速さが180l/minとなったため、主治医の指示の下、その翌月より緊急蘇生バックを用いた呼吸リハビリを開始しました。下の図は30ヵ月間の経過です。果たしてどうなったでしょうか?

 

まず、肺活量は呼吸リハビリ開始後12ヵ月まで増加し、その後も維持されています。 最大強制吸気量、自力での咳や最大強制吸気からの咳は、呼吸リハビリ開始後24ヵ月まで増加が認められました。その後も、経過観察中で図3には載せていませんが、著名な低下は認められず(平成178月現在も)維持されています。

この結果は、対象がまだ10歳代であり肺や胸郭の弾性があったことや、緊急蘇生バックによる加圧に適応したこと、そして咳の技術的な向上がその要因として考えられます。また成長期であるため、呼吸機能も成長した可能性もありますが、全身の運動機能(起き上がり、立ち上がり、歩行、階段昇降など)は低下傾向にあるので、ある程度呼吸リハビリの効果があったのではないかと考えられます。

しかし、そのような呼吸リハビリを行うに当たり、最も重要なのは呼吸機能の評価です。今、自分の肺活量が同年齢で同じ体格の健常者と比較しどの程度低下しているのか(%VCの測定)、十分肺で換気できているのか(経皮的動脈血酸素飽和度:SpO2の測定)、痰を喀出するために十分な咳はできているのか(咳をしたときの最大流速:PCFの測定)を、少なくとも1年に1回は評価しておくべきだと思います。したがって、まず自分の呼吸機能を知り継続的に観察することが呼吸リハビリの第1歩だと思います。呼吸リハビリをしたことがない方、また自己診断で必要ではないと思っている方、まず第1歩を踏み出してみてはいかがでしょうか・・・

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【呼吸リハビリの進め方】

排痰機能の評価は、ピークフローメータ(図1)を使用し咳をしたときの速さを測定します。一般的に、その値が270 l/min以下になると風邪をひいたときなど粘稠な痰の排出が困難になるといわれています。さらに160 l/min以下になると、日常的に気道内の分泌物の排出が困難になるとされています。したがってリハビリとしては、咳の速さが270 l/minを上回るように練習します。しかし、リハビリをすれば咳の機能が飛躍的に伸びるわけではありません。ここでは、当事者の呼吸機能にあった排痰手段を選択すると言ったほうが正確かもしれません。咳の方法としては大きく分けて4つあります。@自力での咳、A緊急蘇生バッグ(図1)を用い強制的に息を吸い込ませた状態(最大強制吸気)からの自力での咳、B自力で吸った状態から介助者に胸を押してもらい咳を介助してもらう方法、C最大強制吸気から介助者に胸を押してもらう咳の介助をする方法です。また、それでも排痰困難となる場合を想定し、カフマシーン(痰を喀出させる機械:図2)の練習をあらかじめしておく場合もあります。

@の方法で270 l/min以上の場合は経過観察で良いと思います。したがって、当院では咳の速さが270 l/min以下となると緊急蘇生バッグを用いた呼吸リハビリを実施することとしています。また先行研究では、肺活量を同年齢で同じ体格の健常者と比較した場合(%VCと言われている)、40%以下になると咳の能力も有効的な数値を下回る傾向にあると報告されています。したがって、肺活量比率が40%程度になっても呼吸リハを開始しています。そのほか、緊急蘇生バッグを用いて強制的に吸気させることは、咳の練習だけではなく、肺の弾性を保つ目的や咽頭機能の維持の目的もあります。

 

【はじめに】

先日,当院に通院されている方の親御さんより、神経筋疾患の当事者の中には「リハビリって効果があるの?」という疑問をもたれている方や、リハビリしたって変わらないのだからしていないという方がいらっしゃるとお聞きしました。なかでも「呼吸リハビリって効果があるの?」「いつ始めればいいの?」「どんなことをするの?」といった疑問があるようです。そこで今回は、呼吸リハビリでどのようなことを行うのか、いつから始めればいいのか、実際効果はあるのかについて実例を挙げて述べたいと思います。


【呼吸リハビリの目的】

神経筋疾患では呼吸をするために必要な筋も低下してしまいます。そうなると上気道感染時(たとえば風邪をひいた時)などに痰が詰まりやすくなり、肺炎となる危険性が高くなってしまいます。したがって、神経筋疾患における呼吸リハビリの主な目的は、有効な排痰機能または手段の維持です。また2つ目の目的には、強郭や肺自体の弾性力(やわらかさ)の維持があります。神経筋疾患では、呼吸筋力が低下することにより強郭の運動が制限され強郭が硬くなってしまいます。さらに十分肺の隅々にまで空気が送り込まれず、肺自体が硬くなってしまいます。




                                                                          


 会報「ふぁみりー」掲載分

 「呼吸リハビリ、始めてみませんか?」                                                            200年月日

                                       独立行政法人国立病院機構広島西医療センター

理学療法士 馬屋原康高

                               

 

  















































































































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