2001年2月21日

厚生労働大臣 坂口力殿
雇用均等・児童家庭局母子保健課 御中
SMA(脊髄性筋萎縮症)家族の会
会長 福島 慎吾




要 望 書


 拝啓 貴省におかれましてはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 「SMA(脊髄性筋萎縮症)家族の会」はSMA(脊髄性筋萎縮症:ウェルドニッヒ・ホフマン病とクーゲルベルグ・ヴェランダー病を含む)本人とその家族を中心として、それを支援する医療関係者をはじめとする専門職やボランティアなどから構成される団体です。東京女子医科大学付属病院に通院する本人・家族たちと医療関係者たちが中心となり、1999年より発足の準備が進められ、同年10月23日に開催された設立大会をもって「SMA家族の会」は正式に発足となりました。
 脊髄性筋萎縮症(Spinal Muscular Atrophy)とは、脊髄の運動神経細胞(脊髄前角細胞)の変性によって起こる遺伝性(常染色体劣性遺伝)の筋萎縮症です。体幹や四肢の近位部に優位な筋力低下と運動障害を示します。この病気は、現在では発症年齢と症状の程度によって国際的には三つの型に分類されています。SMA各型の分類は長いこと、診断する医師によって統一されたものではありませんでした。1991年頃から、原因の遺伝子を発見するために明確な分類と診断基準を確立することが必要であるという考えのもとに、国際SMA協会(International SMA Consortium)が組織されて、上記の分類が合意されました。しかし、まだSMA=ウェルドニッヒ・ホフマン病という診断をしている医師もいるようです。また現在の分類でも、1型、2型、3型のそれぞれの境界は、線で分けられません。成人発症の型を4型と呼ぶこともあります。また、近年人工呼吸管理に関する発展もあり、従来では成人に達することが難しかった重症の症例でも成人まで生存することがけっして稀ではなくなって参りました。
 脊髄性筋萎縮症はいわゆる神経難病のひとつに数えられ、比較的希少かつ、また治療法が未確立であり、後遺症を残す恐れが少なくなく、また経過が慢性にわたり、単に経済的な問題のみならず介護等に著しく人手を要するなど家庭の負担が重く、精神的にも負担の大きい疾病です。症状が重症の場合には同じ運動ニューロン病に属する筋萎縮性側索硬化症(ALS)と同じく長期にわたる入院生活、人工呼吸管理などが必要にもかかわらず、今までの医療的、福祉的ケアがまったく行き届いていなかった疾病であります。とりわけ乳児期発症のSMA1型(ウェルドニッヒ・ホフマン病)は、通常の医学書では患児が1年から2年以内に死亡すると記述されるほどの神経難病として知られています。多くの1型患児は、生後まもなく気管切開を行い、侵襲的な人工呼吸管理を必要として、小児病棟でその一生を過ごしています。しかし、小児慢性特定疾患治療研究事業の対象となっている他の疾患と同様な経済的負担の軽減が行われておりません。
 そこで弊会として以下の事項を要望させていただきたくお願い申し上げます。


要 望 事 項


  1. 脊髄性筋萎縮症(SMA)を小児慢性特定疾患治療研究事業に新規指定し、公費負担の形で難病患者及び家族の療養生活にかかる経済的負担の軽減、及び原因の究明、治療方法の開発等が画期的に進むようご配慮いただきたくお願い申し上げます。
  2. 小児慢性特定疾患治療研究事業につきましては法制化を前提とした検討を希望いたします。ただし、法制化の際に費用の自己負担の発生が不可避の場合、その自己負担額の決定において低所得者等に対する充分なる配慮をお願い申し上げます。
敬具

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