〜下野新聞記事(栃木県) 2006年6月13日 総合・論説より〜
■本県(栃木県)独自の取り組み期待〜希少難病「SMA]〜■
筋肉が次第に萎縮する難病「脊髄性筋萎縮症(SMA)」の家族の会が、同病を本県単独の特定疾患に認定してほしいという要望書を、
(栃木)県に提出した。医療費などの経済的負担を軽減させるとともに、原因究明への働きかけを求めている。
SMAは、脊髄の運動神経が徐々に失われ、筋肉が萎縮し、自立生活が困難となる。人工呼吸器が必要になる場合もある神経難病の
一つだ。同家族会によると、全国のSMA患者は千人前後と推定され、県内で把握されている患者は二歳から十六歳までの五人。非常
に少ないが、本格的な疫学調査は行われておらず診断名が確定していない患者も多いと思われる。
国は現在、四十五の難病を特定疾患に指定し、治療費の自己負担分の一部を公費で負担している。更に本県(栃木県)は一九七五年
度から、一般特定疾患県単医療費助成制度を設けて、国とは別に四疾患を指定している。県外でも三十近くの自治体が独自の助成を行
っている。
しかし、国の難病対策は厳しい財政状況下で交代を余儀なくされ、自治体によっては単独の認定を取り消すところも出始めている。本県
(栃木県)では取り消しもない代わり、同制度の設置以降いくつかの疾患について指定の要望が出されたが、これまで追加は行われてい
ない。
今回要望が出されたSMAは、原因不明で有効な治療法も確立されていない。慢性的な経過をたどるので、特定疾患に指定されるため
の条件は十分に満たしていると言えよう。
一方、国には心臓病など十一の小児の難病疾患群を対象に支援する小児慢性特定疾患治療研究事業があり、神経・筋疾患群も指定さ
れている。SMAは神経・筋疾患群に該当する疾患であるにもかかわらず、厚生労働省は指定から除外するよう通知しているのが実情だ。
専門医からは「神経・筋疾患群の代表的な疾患であるSMAが除外されているのはおかしい。」という指摘がある。
(栃木)県内の四十五疾患の対象者数は約八千人、単独の四疾患は九百人余り。公的支援の後退とともに当事者の自己負担が増加し
ている。無駄を省くことも大切だが、本来必要な支援まで軽減されるのは問題だ。
要望を受けた県は、他県の情報を集めるなどしてこれから内容を検討するという。家族会によると、県外では東京都と埼玉県がSMAを医
療費の助成対象としている。本県(栃木県)でもぜひ、当事者の立場に立った独自の取り組みを期待したい。