過去の医療ニュース

  このコーナーでは、SMAを含む神経難病に関する過去の医療ニュースを掲載しています。
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サルES細胞から神経
-理研など作製 再生治療に可能性-


 様々な組織や臓器の細胞に変化する能力を持つ胚(はい)性幹(ES)細胞から、末梢(まっしょう)神経系の知覚神経や自律神経を作り出すことに、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)などのグループが世界で初めて成功した。サルを使った実験だが、理論的には中枢、末梢すべての神経系細胞を試験管内で作れ、再生医学の可能性を大きく広げる成果。米科学アカデミー紀要オンライン版で29日、発表される。
 同センター細胞分化・器官発生研究グループの笹井芳樹ディレクターらは、胎児期に脳内で神経組織が形作られる際に働くたんぱく質(BMP4)をサルのES細胞に加え、約1割を知覚神経に育てることに成功。このたんぱく質の濃度を5―10倍にすると、今度は自律神経ができることを確認した。
 同様に、神経の形成時に働く別のたんぱく質(Shh)を使うと、約2割が中枢神経系の運動神経になり、濃度を10倍にすると神経回路を作る細胞になった。別の神経細胞から神経線維を引き寄せることも確認できた。
 神経細胞の移植治療は、ドーパミン不足で起きるパーキンソン病が最も早く実現するといわれるが、今回の方法で特定の神経細胞を作製できれば、筋委縮性側索硬化症(ALS)など、中枢、末梢神経の様々な病気の治療に応用できる可能性がある。
 笹井さんは「条件を変えることでES細胞から数十種類の神経細胞を作れるようになった。ヒトの細胞を利用した実験にも取り組みたい」と話している。

<胚性幹(ES)細胞>
受精卵の細胞分裂が始まって数日後の胚から、体を構成するすべての細胞の発生源となる部分を取り出し、増やした細胞。万能細胞と呼ばれる。

【2003年4月29日 読売新聞より】



神経細胞が死滅するのを防ぐ遺伝子


    米マサチューセッツ総合病院のグループは、神経細胞が死滅するのを防ぐ遺伝子を特定した。この遺伝子の働きで作られるたんぱく質が、損傷を受けた神経細胞に自殺を促すたんぱく質の働きを抑えるという。筋委縮性側索硬化症(ALS)などの神経疾患の治療に新たな道を開く成果という。
    ラットを使った実験で確かめた。Hsp27という遺伝子を神経細胞に組み込み、この遺伝子が働いていない神経細胞と比較した。働いていない場合は、損傷した神経細胞がそのまま死滅したという。


【2002年12月4日 日経産業新聞より】



脊髄損傷のサル、ヒト細胞で機能回復


 読売新聞によれば、脊髄(せきずい)が損傷したサルに、様々な神経の細胞のもとになる人間の胎児の神経幹細胞を移植して治療することに、慶応大医学部の岡野栄之教授らの研究チームが成功したという。これまでラットで同様の研究はあったが、人間に近い霊長類での成功は世界でも初めてであり、 脊髄損傷の治療に向け大きな一歩となる研究だと言われている。この研究が脊髄性筋萎縮症(SMA)の治療研究にも応用されることを期待したい。
 【2001年12月10日読売新聞より】



野菜成分が筋肉の難病を緩和


 日経産業新聞によれば、米ペンシルバニア大学などのグループは、野菜などに豊富に含まれる葉酸やビタミンB12が、筋肉の難病である脊髄性筋萎縮の症状を和らげる可能性があることを突き止めた。SMAの 患者は、筋肉の活動に必要なSMNというたんぱく質が遺伝的に少ないことで知られているが、ペンシルバニア大学の研究グループは、SMNが働くときに葉酸やビタミンB12が重要な役割を果たすことを発見した。
 インターネットで検索したところ、葉酸とビタミンB12は以下の食品に多く含まれている。
[葉酸]グリーンアスパラ・ホウレン草などの緑黄色野菜、牛乳、レバー、卵黄
[ビタミンB12]レバー、はまぐり、さんま、かき、あさり、牛肉、豚肉、卵、チーズ
 【2001年6月6日日経産業新聞より】



神経難病 原因たんばく質の働きを解明


 脳の神経細胞が侵されて運動機能などに障害が起こる遺伝性神経難病のしくみの一端を、日米の研究グループが明らかにした。「働き者」たんばく質に「邪魔者」が取りつき、神経細胞が死ぬらしい。治療法開発につながる可能性がある。
 米ジョンズ・ホプキンス大学のクリストフア−・ロス教授、新潟大脳研究所の辻次数授らのグループが23日発行の米科学誌サイエンスに発表した。
 研究したのは「ハンチントン病」と「歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症」。DNAの特定の塩基配列が異常に多く繰り返し、神経細胞が侵される病気だが、遺伝子異常がどのようにして細胞死につながるのかよくわかっていなかった。
 グループは遺伝子の働きの調節にかかわるCBPというたんばくに注目。培養細胞や遺伝子操作したマウス、亡くなった患者の脳などで調査した。
 異常な遺伝子がつくる「邪魔者」たんばく質が、「働き者」のCBPにとりつき、仕事を妨げていることがわかった。その結果、CBPは、神経細胞が生きるために必度な遺伝子を働かせることができなくなり、細胞は死んでしまうと考えられた。培養細胞でCBPを補う操作をすると細胞の死を抑えることができたという。
 【2001年3月27日朝日新聞夕刊(大阪版)より】



神経細胞をつくることに成功

 慶応大学医学部の梅沢助教授の研究グループが、世界で初めて骨細胞から神経細胞をつくることに成功。マウスの骨髄内にある間質細胞の核内にある化学物質で刺激して神経細胞をつくった。
 梅沢助教授は次のように述べている。「マウスだけではなくて、人間の骨細胞でも同様のことは確実にできるだろう。そうなると、神経移植には患者自身の骨細胞を使うことになるので、拒絶反応の心配はなくなる。交通事故などで手や足の運動機能をなくした患者への神経移植は数年後には応用可能になりそうだ」。
 【2001年2月2日夜10時からのNHKニュースより】



末梢動脈疾患治療薬の開発

 第一製薬は15日、バイオベンチャーの「メドジーン バイオサイエンス」(本社:大阪府豊中市)が開発しているHGF遺伝子医薬品を末梢動脈疾患治療薬として独占販売する権利を取得したと発表。HGFは血管新生作用を持つタンパク質で、同剤はHGFを産生する遺伝子を用いた国産初の遺伝子治療のための遺伝子医薬品。虚血部位へ投与することで血管を新たに作り出す働きを促進し虚血状態を改善することから、末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症、バージャー病等)などへの効果が期待されている。
 【2001年1月16日株式新聞速報】



万能細胞から運動神経つくった

 あらゆる臓器の細胞になる可能性をもち「万能細胞」と呼ばれる胚幹(ES)細胞から運動神経細胞をつくることに、マウスの実験で成功した、と岡野栄之・阪大教授らが28日発表した。現在は根本的な治療法がない筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの治療に道を開くと期待される。
 岡野教授らはマウスのES細胞を培養し、特定のたんぱく質を加えると、運動神経細胞に特有の遺伝子が働き始めることを見つけた。ヒトのES細胞からこの新しい運動神経細胞をつくりだすことができれば、運動神経細胞が変性して筋肉を支配できなくなったALSの患者に移植し、病気が治る可能性がある。今後、移植した運動神経細胞が神経ネットワークをつくって正しく機能できるかどうか、などを動物で調べる必要があるとしている。
 【2000年12月29日の朝日新聞朝刊より抜粋】

 (注) ES細胞 イーエスさいぼう Embryonic Stem Cell 胚幹細胞または胚性幹細胞ともいう。ES細胞はあらゆる細胞や個体にまで分化し得るいわゆる全能性をもつ。マウスでは1981年にES細胞株が樹立され、キメラマウスや遺伝子導入マウスさらには遺伝子ノックアウト・マウスの作成に広く利用されている。またラットでも90年代に入ってES細胞が樹立された。98年11月、米バイオベンチャー企業のアドバンスド・セル・テクノロジー社とマサチューセッツ大学が共同でヒトの皮膚由来の細胞核を、核を除いた牛未受精卵に導入するというマウスとは異なった方法でヒトES細胞を開発することに成功した。ほぼ同じ時期に米ウィスコンシン大学とジョン・ホプキンス大学もそれぞれ別の方法でヒトES細胞を樹立した。これによってヒトES細胞から神経、心筋、皮膚、血液などさまざまなヒト細胞をつくっていろいろな病気の治療に利用する道が開けた。米国と英国の政府は個体にまで発育させないことを条件にヒトES細胞の研究を認めている。日本でも科学技術会議(首相の諮問機関)や厚生省がヒトES細胞研究の指針(ガイドライン)の策定を検討している。(マイクロソフト エンカルタ百科事典 2001 より)



神経難病のしくみ解明


 体の働きが制御できず、認識能力も落ちるハンチントン病など、いくつかの神経難病は細胞内にできた異常なたんぱく質のために遺伝子のスイッチが入らなくなって起こるらしいことを、新潟大と筑波大の共同チームが突きとめた。11日から横浜市で開かれる日本生化学会で発表する。新しい治療法の開発にもつながると期待されている。
 これらの病気は、脊髄小脳変性症などを含む7種。合計の患者数は全国で1万人以下と推定されるが、治療法の開発が強く求められている。それぞれ特定の遺伝子に異常があると起こる。
 いずれの場合でも、遺伝子の途中で、グルタミンというアミノ酸づくりを指示する部分が何回も繰り返されるために、グルタミンが異常に長く連なったポリグルタミンという物質ができる。繰り返しが多いほど早く発病し、症状も重くなる。
 辻省次・新潟大学教授ら同チームは、このポリグルタミンが、さまざまな遺伝子のスイッチ役となる物質と結びついて、その働きを妨げることを、マウスを使った実験で突きとめた。その結果、細胞の維持に必要な一群のたんぱく質が作れなくなり、細胞は死んでいくとみられる。
 「タンパク質を合成できるようにする物質を開発するなど、病気の治療につながる可能性がある」と辻教授は話している。
 【2000年10月1日付の朝日新聞朝刊の記事からの抜粋】



岡山大学医学部でALSに新しい治療法


 岡山大学医学部倫理委員会は、神経内科が申請していた筋萎縮性側索硬化症(ALS)の新しい治療法を承認した。
 脊髄に直接薬を注入する方法で、国内でははじめて。新しい治療法は最近海外で採用されており、神経細胞を壊れにくくする作用があるたんぱく質を、脊髄に直接送り込んで病気の進行を防ぐ。20歳以上70歳以下で、発症後3年以内の軽症患者が対象。
 【2000年6月2日朝日新聞朝刊(大阪版)の記事から抜粋】





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